本書の帯に、『「銃、病原菌、鉄」をしのぐ』とある。ジャレド・ダイアモンドの著作が人類の発展格差の根本原因を探求することがテーマであったことに対し、本書は、人類の発展の原動力を解き明かすことで、現代社会の持つ様々な不安要素を拭い去ることをテーマとしている。その原動力として、「交換」、「分業(専門化)」、「共有」という人間の社会経済的な活動に主たる論拠をおいている。これは、最近読んだ「
シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」で取り上げられているテーマに等しく、両書とも同じような方向感で未来を描いている。
著者は、「資本主義や自由経済は悪だ」、「自給自足に回帰すべきだ」、「いずれ地球資源が枯渇する」、「人口爆発が起きる」などの悲観的な考えを、様々な数字を示し、論理的に、饒舌に論破していく。根本に流れるのは、ボトムアップの集団の知恵で人類は何度も危機を回避し、発展してきたという考え方だ。
例えば、以下のようなポイントが印象に残った。
・他人を信頼し、共感する人間の本質があって、他者との交易が始まり、ボトムアップで規則が作られてきた
(まさに「シェア」で描かれている現在のネットの世界でおきている共有の経済と同じ)
・弱い統治機関のもとで、分業(生産性、経済、技術、文化)はより進展する
・自給自足や有機栽培は、むしろ地球資源を荒廃させる
・経済的自由が人口を抑制する
・イノベーションはアイディアの「交換」「共有」により、ボトム・アップに起きる
・アフリカに本当に必要なのは、ボトムアップで非公式に実施されている規則をきっちり制度化することである
第9章までは非常に合理的に論理が展開されており納得感があった。しかし、最後の第10章の地球温暖化のテーマでは、「温暖化のほうが豊かになる」とか、「今まで危機を回避できたのだから、人類は回避できるはずだ」という論調になっていまい、オプティミストの面ばかりが前面に出ている。もったいぶって最後までこのテーマをひっぱっておいて、これでは納得感がない。もう少しテーマを根本に掘り下げた論理展開をして欲しかった。
とはいえ、全体的には、いろいろな発見をすることができ、満足感のある一冊であった。