”東西10万年をつうじて人類史上最大の謎「文明を駆動するものは何か?」を解き明かす”
この壮大な謎解きに挑戦した著者はリチャード・ド―キンスと並ぶ科学啓蒙家として世界的に著名・・・らしい(無知で恥ずかしいが私は本書で初めて著者を知った)マット・リドレー
上下巻に及ぶ大著でかつ東西の歴史について元々明るいとは言い難い私にとっては上巻だけでも読了するのにやや骨が折れた(ちなみに現在上巻読了したばかりで下巻
繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(下)は未読である)。
しかしながら本書を通じて大いに知的興奮を与えられたし、著者の膨大な事実に基づいた一連の主張は非常に説得的であり合理的に見せかけられた不合理に基づく悲観主義者の手による主張を見事に一蹴してみせている点において強く推薦するに値するものであると思う。
その一点においてまだ下巻に手をつけていないながらもレビュータイトルに勝利と付させていただいた。
本書のポイントをあえて3つに集約すると「交換」・「分業」・「専門化」といえる。
”人間は交換によって「分業」を発見した。・・・それによって双方の境遇が良くなり、どちらも専門化しだした。 専門化は革新(イノベーション)を促した。・・・グローバルな分業に人びとが引き込まれるほど、専門化と交換が進み、みな豊かになる。・・・”(p.20)
本書の各所においてこの3つのキーワードがいかにわれわれ人間を”繁栄”させてきたのかの証明に生かされている。
本書を一読する価値があるかどうかの分水嶺とするものとして以下の引用を挙げる。
”人間の進歩はけっきょくこれまで良いものだったこと。私たちはとかく不満を漏らしたくはなるものの、平均的な人間にとって世界は今この深刻な景気後退の局面にあってさえも、これまでにないほど住み良い場所であること。世界は豊かで健全で親切でもあること。それは社会的交流の弊害があるにもかかわらずであると同時に、そうした交流のおかげでもあること。”(p.24)
私は健全で親切である世界についてはやや疑問視しているがそれでも世界的にみて過去に比べれば豊かであるに違いないという考えは以前から持っており、上記引用文について概ね賛意を示すことができた。
そうであるからこそ本書を楽しく読めたのかもしれない。
少なからずとも上記の引用に少しでも賛意を示される方にとって有益な書であると断言する。
蛇足だが、現在の日本に決定的に不足しているのはまさしく合理的な楽観主義だろう。