『十角館の殺人』の冒頭でエラリイが、
「やっぱりね、ミステリと言えば、切り立つ館、怪しげな住人、血みどろの惨劇、そして破天荒な大トリック…例え、時代錯誤と言われてもね」
と言いました(うろ覚えですが)。
しかし、70年前の海外本格黄金期に、そういう作品が少ないとも聞きます。
むしろ日本人、わけても二階堂黎人、綾辻行人とかがそれを実践しているのでしょう。
この作品は、そんな『古さ』を極限まで追求した作品になっています。
まさに怪しい館で起こる、怪奇としか言いようがない密室殺人の数々…。
しかし、とても『古い』トリックがこれでもかと散りばめられているので、
「ああ、なるほど。そうすれば密室の謎が解けるね」と納得するだけで、驚嘆はありません。
二階堂黎人の『人狼城の恐怖』も、最高に面白かったですが、やっぱり密室トリックは発想のジャンプがない実際的な出来ばかりでした。
私は世界ミステリ史上三大密室トリックは、
『斜め屋敷の犯罪』、『すべてがFになる』、『姑獲鳥の夏』だと思っています。
これらは、天才的な閃きで、謎が解かれた瞬間、魂が飛んでいくような素晴らしい興奮を感じます。それこそがミステリの神髄。
この作者も、もっと天啓の閃きで『密室』という壁を跳躍して欲しいです。
…色々書いたけど、面白かったよ!