日本列島に人類が初めてやってきた年代の確定は難しいが、短く見積もっても、弥生時代以降から現代の期間よりも縄文時代のほうがずっと長いのである。ひたすらエネルギー生産を増大させてきた現代までのほうが特別なのである。我々自身の由来と行く末を考える上で、縄文や旧石器時代にまで視野をさかのぼらせ、教訓を得ようとするのは間違いではない。
とはいえ、文字資料があるわけではないので、直接縄文時代について論じるのは限界がある。本書は考古学の知見、世界中の狩猟採集民族の比較、野外科学等を総合し、その輪郭を浮かび上がらせた野心作である。その身体装飾、集団生活、遺構、生死感、親族体系など多岐に渡って論じられる。
えてして先史時代の話は無味乾燥なイメージがつきまといがちだが、むしろその豊かな精神世界が論じられ、はたして物質文明の進歩ばかりを目指した弥生以降の歴史が必ずしも正しいものであったのか、考えさせられるものとなっている。
「縄文学」は発展途上の学問であろうが、本書はそのガイドラインを示したものといえよう。