遺跡の埋蔵品から縄文人の豊かな感情を探るのが本書の試み。本書で語られる縄文人は、ただ生きているだけではなく、深く思考していた。ペットの犬を埋葬したり、数百年かけて巨大建造物を作ったり、生活のためではなく山登りをしたりと、信心深かったことがわかる。人類が文明を築き始めたターニングポイントは、旧石器末期から始まった定住だったのではないかという。定住で使用体力が減り、思考する時間が増え、物もたくさん持てるようになった。建築も始め、ムラもできた。「定住が画期的だった」という考え方は私には新鮮に感じた。ページを繰るにつれ「文明ってこうやって始まったのか」という感激が胸に染み入る。
旧石器捏造事件で、いまだ考古学に信頼が置けなかったが、「埋蔵品だけでこれだけ多くのことがわかるのか」と本書を読み認識を改められた。手間をかけ作りこんだ品々の発掘もさることながら、数千年前の土器の焦げ目から「焼いたのではなく煮炊きだったのでは」と類推できるのもすごい。古さを追求しなくても、遺跡のロマンは尽きないものだ。