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編集者 国木田独歩の時代 (角川選書)
 
 

編集者 国木田独歩の時代 (角川選書) [単行本]

黒岩 比佐子
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

自然主義作家として名を残す国木田独歩は、日露戦争の戦況を伝えたグラフ誌で一時代を築いた有能な編集者であった。独歩のもとには、日夜、友情で結ばれた画家や作家が集い、日本初の女性報道カメラマンも加わり、独歩社を結成。報道写真雑誌を開花させた彼らに、活気ある明治の時代を読む。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

黒岩 比佐子
1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクションライター。『「食道楽」の人 村井弦斎』(岩波書店)にて第26回サントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 350ページ
  • 出版社: 角川学芸出版 (2007/12)
  • ISBN-10: 4047034177
  • ISBN-13: 978-4047034174
  • 発売日: 2007/12
  • 商品の寸法: 19 x 13 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
編集者あるいはジャーナリストとしての国木田独歩の業績はこれまで黙殺されてきたに等しいだろう。

たとえば山本健吉は『武蔵野』を論じるにあたって「彼自身、政治家、新聞記者、実業家、教育家、詩人、宗教家などはなはだ夢が多く、それらのいずれの夢にも失敗した果てに、遥か後になってようやく文人としての外生きることのできない自分を見出したことを、この場合考慮に入れなければならない」などとしてこの小説が小説というよりも回想記的なものであることを指摘したことがあった。

このような見方は年譜の上からも疑問が残るのであるが、この本の著者は独歩が創刊した「東洋画報」が、今日のようにメディアが発達していなかった時代における戦時下のフォト・ジャーナリズムとしていかに重要な役割を果たしていたか実にさまざまな角度から明らかにすることによってそうした見方を完全にくつがえしている。また本書における「近時画報」の「東北飢饉号」に関する記述は独歩が編集者として社会的に果たした役割が不当に看過されてきたことを読者に痛感させるに充分なものである。

「あとがき」によれば著者は「近時画報」や「戦時画報」を40冊以上収集したそうであるが、こうした資料収集にかける情熱もさることながら、たとえばその表紙にある住所やデザインなどから独歩社の内情について読み解いてゆく手腕もまた見事である。

著者が収集した資料がこうした形で日の目を見ることは実に喜ばしい限りであるが、さらに本書を魅力的にしているのは、実に豊富な資料に関してあえて注をもうけるようなことはせずに全て本文中で過不足なく説明していることにある。読者は一々注と本文を往復する手間が省け、一気に通読することができるのだが、これはとりもなおさず著者が取りあげる資料が隅に追いやられることなく全てきちんと説明されるべきものであることの証であろう。

生活者としての作家の姿を明らかにするとか、作家が生きた時代の中でとらえなおすといった評価や宣伝はこれまでもいくつもの評伝においてなされてきたが、これほどまでに作家の喜怒哀楽や見果てぬ夢を伝える傑作はあっただろうか。

むろん今日のいわゆる「文化研究」という枠組みにおいても本書は群を抜いている。

本書を読んだあとにあらためて第7章の扉にかかげられた集合写真の中の独歩を見れば後世の評価に満足げな表情を浮かべているようにさえ思えるほど、新鮮な驚きと感動を読者に与えてくれる快著である。
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By ネモ トップ100レビュアー
形式:単行本
国木田独歩が編集者であったことは知っていた。伊藤整の『日本文壇史』を読んでいたからだ。文庫版『日本文壇史総索引 (講談社文芸文庫)』を見てみると分かるが、「独歩社」「近事画報社」は、各々10数ページに出てくる。
それに、『日本文壇史』に登場する「独歩」は、350ページを越えるので、文壇における独歩及び、最初の妻とのいきさつについてもほぼ知っていた。
もちろん、著者は大量の第一次資料を収集し、調べているので、細かい部分では知らないことも多かった。なかでも、女写真師・梅子のモデル探しはミステリの謎解きを思わせて興味深い。ただ、全体として、すごく面白いとかぐいぐい興味を惹かれて仕方がないということはなかった。

そういう私にとって、本書でもっとも興味深かったのは、「近事画報」などを含めたグラフ誌にかかわる部分である。名取洋之助の仕事についても多少知っていたが、日本のグラフ誌の創世期の状況や矢野龍渓のかかわり、欧米でのグラフ誌の動向との比較などは知らなかったことばかりで、面白かった。

著者は、『パンとペン』を刊行した後で亡くなられたということだが、若かっただけに残念でならない。
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By mita
形式:単行本
文学にも文学史にも疎いので、国木田独歩というと『武蔵野』に見られるような、自然描写や情景描写がめっぽう上手い作家、くらいの印象しか持っていませんでした。

その国木田独歩が、編集者や発行人として、明治期の雑誌ジャーナリズム、とくにグラフ・ジャーナリズムを先導したという。
「ホンマかいな?」と思って読み始めたところ、「へえ〜〜!」という驚きの連続で、グイグイひき込まれました。

著書は元編集者で、古書のコレクターだそうで、国木田独歩が作った雑誌を集め、その編集手腕について、同業者ならではの視点で緻密に分析しています。

そこから読み取れる国木田独歩の姿は、着想がユニークで洒落心があって、時代の波頭を読むことにも長け、時には思いつきで「売らんかな」丸出しの企画を立てるものの、「売らんかな」企画がきっちり頓挫するという、愛すべきキャラクターの編集長でした。

本書の極めつきの「へえ〜〜!」は、明治期の滑稽系雑誌(今だとパロディ雑誌というのかな?)を巡るエピソード。

宮武外骨が発行する『滑稽新聞』、北沢楽天の『東京パック』の向こうをはって、国木田独歩は『上等ポンチ』を創刊します。ほぼ同じ時期、すでにあった滑稽系雑誌の『団団珍聞』を買収し、発行人になろうと試みた人物がいて、それが幸徳秋水。大逆事件で死刑になった社会主義者です。

国木田独歩、幸徳秋水、宮武外骨、北沢楽天が、雑誌を通して「お笑い」を競おうとしていた時代が、かつてこの国にあった!

そんな知られざる明治時の空気を、著者は膨大な量の文献調査と精査を通して、真摯に、しかもビビッドに(この点がすごく良い)伝えています。その情報精度の高さは、巻末の参考文献を見れば、納得できるのでは。

この人が書く明治ものを、もっともっと読みたかったし、驚かせて欲しかったです。訃報は残念ですが、本書は著者の命の何倍分も生きながらえる、名著ではないかと思います。
ちなみに編集者・国木田独歩も、「驚きたい」が口癖だったそうです。
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