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定番書である、齋藤正彦「線型代数入門」は例が豊富で、また基本変形を説明の中心に据えており取っつきはよいが、双対空間やテンソル代数の説明が無いに等しく、また Jordan 標準形の説明が難しすぎる(著者自身がこの欠点を認めている)。また、佐武一郎「線型代数学」は内容の問題はないが初学者には余りにも難解であろう。その意味で、本書は上二者の欠点を共に補う絶妙の一冊と言える。
敢えて欠点を挙げるならば、著者に「全てを網羅しよう」という意識が強すぎることか。内容的に不要と思われる事項も多く、またその割には歴史的経緯など「数学の内容」以外に関する言及は比較的貧弱である(しかし、これは本書が書かれた時代の世相を反映したものであり、一概に欠点と決めつけるべきとは言いかねるかもしれない)。
しかし、大学数学の教科書として「無味乾燥で高踏的」なものが余りにも好まれる昨今、この程度のくどさは欠点というよりむしろ美点であろう。とりわけ、現在は高校のカリキュラムが余りにも貧弱であり、3 次元空間の解析幾何学(平面の方程式など)すら扱われていない無残な状況なのであるから、この程度親切な導入はむしろ、高校数学と大学数学の落差を埋めるためには必須のものとすら言えよう。
なお、時間的余裕のある諸賢には、高木貞治「代数学講義」を併読することをお勧めしたい。大学数学特有の居心地の悪さを取り除き、同時に高校数学で残った諸疑問の多くが解消されることとなろう。
あと、確かにこの本は「文系でも読める」ようにはなっていますが、いわゆる文系向けの本ではないと思います。文系の方が本書を使うのは、相当な能力かインテンシブが必要かと。
#もっと早くこの本を知っていれば夏学期の単位も落とさずに済んだのですが。
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