本書では前国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの活動を紹介・分析している。文中、彼女を「小さな巨人」と呼んでいる箇所がある。読みすすめていくうちにそれが彼女を一言で言い表す言葉であろうと感じた。
彼女を長としたUNHCRの職員は、難民に対して常に彼らの傍らにいるという姿勢を通した、砲弾の飛び交う戦地でも、飢餓状態のキャンプでも。武装勢力に脅されたりすることもたびたびであり、職員が命を落とすケースもあった。非武装の人道支援団体としては、武装勢力に対抗する手段は会話と説得のみである。
それを十年貫き戦い通した緒方さんはまさに「小さな巨人」と呼ばれるにふさわしい存在であり、彼女が日本人であることをもって自分は日本人であることを誇りに思えた。
本書は彼女の高等弁務官の経歴と女史へのインタビューを中心に構成されており、時折周辺の人々の当時の彼女に関する回想などを交えながら進んでいく。
後半の一部に高等弁務官を引退した彼女が日本政府に対して苦言を呈した発言があって、現在の日本の欠点を的確に表現していると感じた。
日本が救済するために認定した難民は、過去二十年で三百人程度なのにエンターテイナーとして訪日する外国人は毎年十万人近くいる点を挙げて、「エンターテインメントの方が難民より優先されているのか」と指摘する。
最近読んだ本の中では最も感銘を受けた。一人でも多くの日本人が本書を手に取ることを願ってやまない。