第二次大戦下の英国、陸軍病院で起きた殺人事件を、コックリル警部が調査していく本格ミステリ。
容疑者は六人と限られているんだけれど、犯人がなかなか特定できないところが、本作品の一番の面白さ。緑の手術衣を着て、顔の目の部分だけが見える緑のマスクをつけた犯人の姿が恐かったなあ。著者の別作品のあるシーンが脳裏にオーバーラップして、ぞおっとしました。
空襲のサイレンが鳴り、爆弾が辺りに落ちる戦時下の雰囲気に、臨場感がありましたね。そういえばこれは、第二次大戦中の1944年刊行の作品。戦争の雰囲気を伝えるミステリとしては、ディクスン・カーの『爬虫類館の殺人』とともに印象に残ります。
犯人が分かった後もまだ話が続くエンディングの情景には、静かに心にしみてくる余韻がありました。容疑者たちの間に生まれた連帯感、それがいい感じで描かれていたんですね。嵐が去った後の静けさとでもいう、不思議な味わいがよかった。
今までに読んだブランドのミステリでは、本書と『ジェゼベルの死』、短篇「ジェミニー・クリケット事件」(米国版、英国版ともに)が気に入っています。