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緑の資本論 (ちくま学芸文庫)
 
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緑の資本論 (ちくま学芸文庫) [文庫]

中沢 新一
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (10件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

貨幣を中心に据えた『資本論』を、一神教的に再構築すると、全く新しい価値体系が現れる。21世紀の思想家が世界を新たに読み解く、現代文明への根源的な問い。新たな可能性を示唆する書。
--このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

イスラームとキリスト教。同じ一神教的世界にありながら、その経済思想には重大な差異がある。イスラーム的貨幣論は「一」を意味する「タウヒード」の構造によって組み立てられ、徹底した唯一神信仰によって利子を厳禁する。一方、キリスト教的貨幣論は「三位一体説」にもとづく増殖性を秘め、資本主義と極めて親和的である。この両者の圧倒的な非対称が世界の現状を理解する鍵であり、イスラームは資本主義にとってその存在自体が一つの経済学批判であることを、『資本論』の核心である価値形態論を再構築することによって明らかにする。

登録情報

  • 文庫: 233ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2009/6/10)
  • ISBN-10: 4480092196
  • ISBN-13: 978-4480092199
  • 発売日: 2009/6/10
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (10件のカスタマーレビュー)
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91 人中、81人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By miyata2
形式:単行本
イスラーム理解へ大きく眼を開かせてくれる一冊である。「現代の資本主義経済へのアンチテーゼとしてのイスラーム経済」を宗教論、文化論として本質的解題を試みている。「利子」=「自己増殖」価値による「象徴と現実」の「一致」「非一致」をキーワードに、イスラームのもつ高純度な思想があぶり出されている。

イスラームではコーランが「利子」取りを否定している。ユダヤ教では「相手が異教徒なら是」、キリスト教では中世以降の貨幣経済の進展をみて「高利でなければ是」とするスコラ哲学~古典派経済~資本主義の下地を提供した結果、「ユダヤ・キリスト教」は、資本主義に原動力を与えた宗教であると示唆されている。

資本主義でも共産主義でもないイスラーム社会では、物と物の厳正な等価性を持しながら行う商業活動は奨励されるが(スークでは相対取引が基本)、自己増殖的な商業や利子取り活動は否定されている。商品の厳密な交換価値を維持するには、その入り口で交換価値を狂わせる魔術、聖霊、偶像などの、いわば「他の神」の存在を許さないというのがコーランの、「神をおいてほかに神なし」のイスラームの根本教理である。「象徴と現実の一致」を狂わせる=自己増殖する=あらゆるものの存在を認めないということが、イスラームの唯一神信仰のベースにあり、偶像崇拝やあらゆる記号的象徴を認めない。そのために、現代の「欲望肥大の記号化社会」=「資本主義社会」に対するアンチテーゼともなっている。P>イスラームの現代性を、経済問題を中心に追求していくと様々な議論の余地があるように思われる。「原理としてのイスラームは、巨大な一冊の生きた『緑の資本論』である。資本主義にとっての『他者』は、この地球上にたしかに実在する。イスラームはわれわれの世界にとって、なくてはならない鏡なのだ」と、著者中沢新一は結んでいるのであるが・・・。

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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 素山
形式:文庫
私がかつてヴェーバーを読んで疑問に思ったのは、なぜ充足欲と追求欲が分離したのか、なぜそのことがあたかも神々しく捉えられたのか、それは一神教が恩恵証明を介してもたらした現象ではあろうが、一神教の嫡子というべきなのか、あるいは鬼っ子なのかであった。カソリックにおける信仰のヒエラルヒー(所詮根拠の薄いものではあろうが。)を失ったプロテスタント達が、神に近づこうとするのは必然であったのだろうか。

この本は、同じく一神教であるイスラムにおいて増殖性に対する敵対心がいまだに生き続けていることを再認識させてくれる。かつてこの世に相当程度普遍的であった利子の否定をいまだに保ち続けているのはその表れであろうし、そもそもイスラムの「タウヒード」(一化)においては、万物はすべからく一の表現であってその間にヒエラルヒーは存在しえないのであろう。そして、アニミズムとイスラムの近似性あるいは同質性をも教えてくれる。キリスト教は三位一体論を抱え込んでいる点で、その内部にヒエラルヒーの萌芽をもっており、厳密な意味で一神教とは言えないのかもしれない。

本書のうち、「圧倒的な非対称」は非対称社会(人間社会同士、人間と動物間)の野蛮さを、「緑の資本論」は本来の一神教としてのイスラムと、三位一体や増殖性にまとわられたキリスト教との差異を、「シュトックハウゼン事件」は快感を求める安全球体としての我々の社会における芸術の困難さを、「モノとの同盟」は二元論や排除性を用いた増殖は幻想にすぎず、あるがままの万物との再「同盟」こそが適切であることを教えてくれる。いずれも適切な視点からのロマンチックな文章であるが、私にとっては最後の「モノとの同盟」こそが最も勇気づけられるものであった。資本主義や現代社会について思索により疑問をもった人たちに、開かれたハートをもって読んで頂けば、名著となると思う。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By kanedaitsuki トップ1000レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
 学問的厳密さにおいて、いささか疑わしいところがあったとしても、新しい思考を触発し、読み物として面白い本を書く物書きもいるもので、中沢新一はその中の一人であろう。
 最後に収録された論文をのぞいて、九・一一の直後にひらめいた直感(天啓)から書かれたとのことで、それは表題作「緑の資本論」において、同じ一神教であるキリスト教とイスラームとの神概念の原理的差異を論じつつ、グローバル経済(西欧型資本主義)に対抗するものとしてイスラーム経済を大きく取り上げているところに、そのスタンスはよく表明されている。
 この論文の主旨は、以下の段落にほとんど集約されている。
「イスラームの論理は、世界がヴァーチャル化していくことを許さない。風のそよぎも光の輝きも、そのままにしてアッラーであり、心に浮かぶとりとめもないイメージも、アッラーの意志のあらわれなのである。イスラームは資本主義を嫌悪し、自分たちの世界にそれが侵入してくることを、重大な悪ととらえるだろう。原理におけるイスラームは、利潤が生み出す豊かな社会を拒否してでも、世界が意味にみたされてあることのほうを、選びたいと考えるのである。その世界はなにからなにまでが直接的で、資本主義の目からすれば、遅れた貧しい社会と映るかも知れないが、人間が意味に生きる生き物であるかぎりにおいては、はるかに豊かな世界であると、言えるのではないか」(p.124)
 なんとも怪しくも魅力的な、イスラームへのラブ・コールではないか。
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