元毎日新聞の記者である著者が、歴代の日本の総理大臣の娘たちを訪ね歩いてインタビューを重ね、一般有権者には知られざる、家族の前にだけ見せた宰相たちの生(き)の姿を綴った一冊です。
取り上げられている娘たちの父親は、
鳩山一郎、岸信介、池田勇人、福田赳夫、大平正芳、竹下登、宇野宗佑、宮澤喜一、村山富市、橋本龍三郎、小渕恵三の11人。
本書が浮かび上がらせる彼らの姿で最も印象に残るのは、それぞれの政策に対してメディアが容赦なく厳しい批判の矢を放ち続ける中で、家族は家族であるがゆえに、父を信じて支え続ける健気な姿です。
首相というより、お父さんを、お父さんであるからこそ守る家族の姿は、ときに涙をさそうほど献身的で暖かいものです。
小渕恵三の娘・優子はTBSのADとして働いていた時期もあり、自らが籍を置くマスコミが父を容赦なく攻撃する様子を目の当たりにして、職を辞して父を支える私設秘書に転じます。そんなところにも、家族愛のひとつのありかたを見て心打たれる思いがしました。
そしてまたお父さんも、家族の前では素顔をさらし、娘に厳しくもあり、また甘える姿を見せるところもほほえましい。まさに家族の肖像を垣間見せてくれます。
激務の中で命を削った首相たちのかげに家族ありという読み物としては大変楽しく読ませてもらいました。
*124頁に「(昭和五十四年の)半年後」のことを「半世紀以上も前の出来事」と記しています。昭和54年は1979年ですから、本書出版の2010年現在、まだ半世紀たっていません。
*165頁に「上京」という言葉に「のりこ」とルビが振られています。これはその先にある「(次女の)敬子」にふるべきルビを誤植したものと思われます。