産経新聞大阪本社が1年以上かけて行った連載記事の書籍化。全共闘運動から40年がすぎ、あらためてその意義や成果が問われるなか、全共闘経験者たちではなく、若い世代の記者があらためて関係者たちに取材し、時代を検証しようとこころみたものである。全共闘運動の著述の多くは、全共闘関係者たちによる「回顧録」であるか、単純な全共闘批判の終始するかのどちらかであるが、この本はそのどちらでもない。キャッチフレーズは「総括せよ」と挑発的だが、内容は丹念で丁寧なインタビューによってつづられている良質なルポルタージュ作品となっている。挑発に乗ってしまって、おもわず本書を開いた団塊世代も、読み進めるうちに、のめり込んでしまったという人も多いはずだ。
内容は、重信房子被告への獄中インタビューなど、これまで普通のマスコミでは踏み込めなかったところにも入りこむなど、スクープ的色彩も強い。また、全共闘との敵と味方の証言が同時にきちんと収録された初めての全共闘本といってよいかもしれない。
一方、全共闘を直接しらない人たちにとっては時代の入門書としても適しているといえるだろう。全共闘や学生運動に興味を持った人はまず、本書をみてから類書をみることをお薦めする。巻末の参考文献は、全共闘にからむ基本書リストにもなっている。
産経新聞大阪社会部は社会現象を深く掘り下げるルポ作品を次々と生み出している。死の問題に正面から切り込んだ「死の教科書」、生活保護制度の光と陰をクローズアップした「生活保護が危ない」(ともに扶桑社新書)、また、注目の大阪府知事の実像に迫るとともに、読者とともに橋下府政について語り合った「橋下徹研究」(産経新聞出版)など、新聞社ルポ作品のヒット作を連発しており、今後の作品も注目される。