太平洋戦争中に起きた5つの事件を題材にした戦史小説の短編集。
北海道日高の漁村の沖合で撃沈された兵員輸送船。輸送船を脱出し、真っ先に村に上陸してきた将校達は、なぜか沖合にひしめく兵士の救助に向かおうとしない。数日後、近隣の漁村に流れ着いた遺体の中には、腕が切り落とされたものが多くあった。(「海の柩」)
昭和19年6月、愛媛県沖合で発生した大型潜水艦沈没事故の生存者はわずか2名のみ。そして9年後、海底60メートルから沈没した潜水艦の引き揚げ作業が始まるが、その結末は衝撃的であり、悲しいものとなった。(「総員起シ」)
この他の収録作品は、樺太でのソ連軍侵攻の最中に起きた看護婦達の集団自決事件(「手首の記憶」)、戦闘はすでに終結していた昭和20年8月22日に北海道沖で「小笠原丸」が正体不明の潜水艦に撃沈され、樺太からの多くの引揚者が犠牲となった悲惨な事件(「烏の浜」)、散髪係として軍司令部に最後まで同行した人物が見た沖縄戦(「剃刀」)を描いた3作品。
戦争というものの悲しさを強く感じさせる印象深い1冊。