装丁が『
和声―理論と実習』(通称:芸大和声)に似ており、また芸大の教科書として書かれたという点も共通していますが、それよりずっと後に出版された「別の本」です。
内容についても、芸大和声3冊を1冊にただ縮約したというものではありません。こちらはこちらで別の構想の下に編纂されており、違った構成をもっています。どちらかといえば『
和声の原理と実習』(外崎幹二・島岡譲、音楽之友社、1958年)を基に敷衍・拡張した形です。序章で基礎的な概念を定義した後、実技篇・分析篇・原理篇と続いています。
実技篇は、古典的な四声体の実習です。紙数の都合からか、やや駆け足で凝縮気味の説明になっています。しかし、もし芸大和声の説明がくどすぎると感じるようであれば、こちらの方が洗練されていて理解しやすいと思います。
分析篇では、よく知られた楽曲をとりあげて、実際にある楽曲を分析するにあたり四声体和声の理論をどう役立てていくのかを例示しています。
原理篇は、『和声の原理と実習』の原理篇に似ていますが、扱っている時代範囲が拡げられ、説明も大幅に充実したものになっています。
芸大和声は何よりも四声体課題に精通することに重きを置いている感がありますが、本書はクロスレファレンスによって四声体実技・楽曲の分析・調性和声の原理究明を有機的に結びつけて解説しています。その意味で「総合」の名にふさわしい内容をもつ書物です。