『総力戦とデモクラシー』と題する本書が「戦争の日本史」の一巻である以上、読書人は「デモクラシー」から大正デモクラシーを連想し、その勃興と太平洋戦争突入までの全体主義化の流れを中心に論じた内容を期待するだろう。しかし、そうした期待はものの見事に裏切られる。300ページ近い紙幅のうち、日本史に焦点を合わせた紙幅はわずかに40ページであり、しかもただの一節たりとも真正面から日本の「デモクラシー」問題を取り上げていない。おそらく著者は、書名に即して本書を書下したのではなく、これまで書きためた論文等を適当に再編集してとり繕ったのである。「戦争の日本史」シリーズは、玉石混交だが、本書は紛れもなく石の範疇である。