単なるサスペンスを超えた、人生そのものの意味さえ問うようなクックにしか書けない
作品である。一見、幸せな家族が些細な出来事から互いに疑心暗鬼になり、崩壊していく。
今まで自らが確固として信じてきたものが、実はうすっぺらな虚像にしか過ぎない事を痛感
する。その様子をクックは見事に描ききった。「人を知るなんて事ができるのでしょうか」
という物語の後半に登場する会話はあまりにも重すぎる。
いつかあっけなく壊れてしまう、もしくは既に壊れ失われてしまった虚像の破片を抱きながら、
我々はそれでも人と接しながら生きていかねばならないんだろう、そんな生きることの切なさ
と空しさに読了後に浸ったと同時に、今家族等と接する事ができる有難さを痛感させられま
した。