信教を貫こうとして海原を遠く渡り、北米の寒い土地に社会を築いた原アメリカ人たちの息づかいが眼前に現れてくる小説作品である。(ただし実際のそれとは異なるのかもしれないが。)
この合衆国の父母とも言える人々と今日のイーラーンの人々との間にどれほどの違いがあるというのだろう。この合衆国の父母とも言える人々の遠い子孫は今や何重にも堕落を重ね、自分たちの父母に似た異国人を異常な宣伝によって攻撃している。それに、鏡に写る自分の顔を見ることがないのか、日本のNHK・BS放送の国際ニュース男性キャスターが何の自己点検もすることなく、米国政府の言うがままに、訪れたことのない国イーラーンを偏見で裁断しているのを見ていると、何とも言えぬ苦い気持ちになってくるのを止めることはできない。私は二度、それぞれ20日あまり訪れたが、ニュースで見せられている様子とはあまりにもちがう。
さて、この小説の主人公のひとりである女性ヘスタとその幼い娘は罪をとがめるその社会の中で人間としての独立領域の上に立っている。そうしたふたりの尊厳の周囲を取り囲む社会的悪意やある個人の悪魔性もまた描かれている。
十分独立できていない若いデムズディルは押しつぶされてしまう。
多くの人物が幽霊か精霊/天使のようであり、(精神的な死)刑の後の死後の世界を描いたようでもある。
霊的小説であり、奥に含まれているものの質量が大きいためひじょうに厚みがある作品である。緋色の文字とは血の文字ということでもあってホーソーンの心の血によって書かれた本である。小説の方法・技巧的にも優れ、読まないで済ますことはできない小説リストに含まれる。フィードラーの「アメリカ小説における愛と死」もできれば読んでください。