実質的な第2部の始まりらしく、無類の強敵たる新キャラが出てきたりする本巻だが、どうやら前後編あるいは前中後編くらいになりそうな話の始まりでもある。不穏さとすれ違いばかりで道筋の見えない展開である。不穏さとはまず今回の敵。はっきり言って強過ぎる。バランスブレイカーばりの万能超人である。この難敵をいかに攻略していくかは次巻以降のお楽しみとなろうが、もう1つ厄介なのがすれ違い。アリアとの仲は依然すれ違ったまま。会話を交わす機会も少なく、しかもすれ違いを助長させる場面に限って鉢合うというお約束展開的徹底振りで、お互いの誤解が一向に解けないのである。武偵の将来を左右する大事な時期にこうした演出を施す意地悪な作者である。その代わり、今回メインヒロインを張ったのがレキ。もぅ全編レキ一色なのだが、これがまたすれ違い、というより一方通行、僅かに口を開けば電波系という不思議っぷりでキンジを困惑の極みに叩き落とす。これがコミカルに展開されることで実に面白くなっている。あまりに無自覚なため、結果的に厚顔無恥というか、唯我独尊の傍若無人にも見えてしまうレキだが、これがこのままで終わらないのが本巻の良いところ。じっくり丸々1冊用いてレキの表装的な人物像と素性の一端や、ずば抜けた能力などを示しながら、その内面で静かに進行していた人間的な感情の醸造、その萌芽をなかなかドラマチックに見せてくれる。己の保身(笑)のためにキンジがコツコツ仕掛けた、一見たわいもない“レキ人間化計画”が、たわいもないからこそ小さな幸せをレキに知らしめることに繋がった、少し溜飲の下がる展開である。しかしそれも束の間、大ピンチに陥ったレキが心配な引きを迎えてしまうのである。それにしても、レキもまた偉大なる英雄の系譜にいたのね。