ヴァン・ダインの衒学趣味を基調に、更にそれを醜悪指向にデフォルメして館物に仕立て上げ、単に「奇を衒う」事だけに意を払った空疎な印象を与える作品。澁澤龍彦氏の影響が随所に見られると感じた。何処にオリジナリティがあるのか皆目不明で、最後まで読み通すには忍耐力が必要だと思う。だが、途中で投げ出すには惜しい点がある。
全体の4/5程度は上述の感じで進むのだが、結末に近づくに連れ意外と骨のある作品である事が分かって来る。現代ミステリのあり方に一石を投じようとしたものなのだ。カー「三つの棺」中のフェル博士の言葉を思い出す方も多いであろう。作者の力みが目立ち過ぎていて未熟な印象は免れず、作品として成功しているか否かは疑問だが、意欲は買えるのでないか。今後、作者自身の言葉を乗り越える作品の登場を期待したい。
尚、内容とは本質的には関係ないが、アインシュタインのノーベル賞受賞理由が相対性理論によるものでは"ない"という事くらいは物書きの常識として知って置くべきであろう。