幕末〜維新にかけての物語は、明治政府を構成した勝ち組(官軍)を中心に歴史が
描かれ、賊軍とされた幕府に連なった人達の物語は取り上げられることが少ない。
しかし激動の時代に生き、諸外国との最前線に立った人達はむしろ幕府側であり
京都朝廷の世間(世界)知らずの公卿達の思いつきに振り回される苦衷を味わった。
この苦衷の中でヨーロッパまで足を延ばし、諸外国に開港した貿易港を再度閉鎖する
交渉を行った(当時日本国内で語学が優れ、貿易港での実務に携わった若手を中心に
した)欧州派遣組の旅の記録ともいえる本である。
エジプト、ピラミッド前で写された侍達の写真を見たことが筆者にこの物語を書かせ
歴史資料を掘り起こし、34名のそれぞれを眼前に浮かびあがらせた。
明治政府は薩長土肥で構成されたように普通は考えられているが、この本を読んでも
知られるように、実質の組織運営者や中堅幹部からトップに至るまで、その多くに
幕府の若手で海外経験や知識、実務の能力のあるものが就いたことがわかるし、
ある意味で明治政府は、危機の際の挙国一致体制だったことは理解しておきたい。
自立・自尊の精神と、アジアの人間としての自覚を持つ素晴しい男たち。
いい本です。