迂闊なことに「日本語が亡びるとき」の水村美苗氏が「続明暗」を20年も前に書いていたことを知らなかった。そこで急遽、漱石の「明暗」を新潮文庫版で読み、「続明暗」を読むことになった。漱石の「明暗」は未完の作品であり、その後どう進展するのか、読者にとって、とても気になる小説である。
津田のもとをなぜ清子は去ったのだろうか? 津田はお延に内緒で清子のもとを訪れたが、このことは、その後の津田とお延の関係に影響しない筈はない。吉川夫人と小林は、津田、お延、清子の関係にどのように絡んでくるのだろうか?
水村美苗氏は漱石と同業者の小説家として「明暗」を読み込み、「あとがき」によると漱石の巡らせた伏線を丁寧に確認しながら筆を進めている。恐らく大筋としては漱石の意図したものと大きな違いがないものと思う。
また「あとがき」によると、漱石の小説法に無理に合わせることなく、筋の展開を劇的にしたという。この辺りは、漱石の小説法での続きを期待した人には違和感があるかも知れない。とにかく文豪漱石の未完の作品「明暗」の続きを書くという勇気ある作家の試みは成功している。