その時代の雰囲気を捉えた絵それ自体がひとつの迷路になっていて、迷路とともに、隠し絵の仕掛けも凝らされた歴史絵本。縦310mm×横230mmの縦長サイズの大型本の中に収められた、日本のある時代の景色を描いた十二の絵。恐竜時代から江戸時代までを描いた前作に続く本書では、黒船来航の幕末から、明治、大正、昭和時代の風景が取り上げられています。
途中でトケイ石(せき)を拾って入口から出口までをたどる【めいろ】(簡単なのとちょっと難しいのと、ふたつの迷路があります)と、その時代の風物が全体の絵のなかに隠されている【かくしえ】のふたつが、本書の楽しみの主な趣向。【めいろ】をしている時は、自分がコロボックルみたいに小さくなって絵の中を歩いている気持ちに、【かくしえ】を探している時は、神話の巨人みたいに大きくなってその世界を上から眺めている気持ちになりました。
まだ高い建物もなく、平らかな景色が続いていた前作と比べ、文明開化の明治時代、博覧会の大正時代、デパートやアパートが建つ昭和時代と、本書の絵の数々からは、より変化に富んで多彩な印象を受けましたね。時代の推移にともなう風景のそうした変貌も巧みに絵に盛り込まれていたところ。なかなか、奥が深いものがあります。ひととき、その時代のとびらを開いて旅する気分で過ごし、楽しむことができましたよ。
なかでも気に入った一枚は、大正時代の博覧会の絵。メリーゴーラウンドに観覧車、水族館に電氣光學不思議館が点在する景色は、さながら、江戸川乱歩の幻想世界に遊ぶかのよう。迷路でうろうろしているうちに、この時代のノスタルジアに浸って、しばし、うっとりとしておりました。