とてもではないが5つ星には値しません。
小失敗の研究,とあるのですが研究でなく ‘失敗事例の紹介’ に留まる内容です。
私自身は名著 ‘失敗の本質’ から流れて本書に出会ったのですが
とてもではないが同じ土俵には上げられないと思います。
後知恵・追究不足が随所に見られるからです。
たとえば筆者は,四発重爆をなぜ作らなかったのか?という提起をします。
(傑作機だった)二式大艇をベースにして進めていけばよかった
胴体だけを新たに設計すればよい
などと断じておられるのですが…
そもそも二式大艇が実用に足る性能を発揮するかどうか?
ということは
ある程度機体の開発にメドが立たなければ分からない問題であって
そんなに待っていてはそもそも戦争に間に合っていない訳です。
深山・連山の開発が失敗する,ということが判明していて
かつ二式大艇がうまくいくということが予見されなければ成立しないロジックです。
それから筆者の提唱する ‘戦闘機の性能指数’ 。
上昇(加速)・速度・旋回性能を独自の指標で数値化し,
この数値を元に機体開発体制への批判が加えられるのですがよく見てみると。。。
馬力荷重・翼面馬力・翼面荷重(一部は逆数)を掛け合わせており
(馬力/重量)*(馬力/翼面積)/(翼面積/重量)これが約分されてしまうため最終的に
→(馬力/重量)^2
となって実は,馬力荷重だけを強調する指標になってしまっています。
これで零戦の機体設計はどうの云々と語られても迫力がない訳です。
筆者の知識の広さには敬意を示したいと思いますが
せっかくの題材をもっともっと深く追究してほしいと惜しまれてなりません。
また,編集の方にはこのような誤謬を指摘する視点を持ってもらいたい。
全般には
戦争における失敗を題材に何かの話題を提供したり,
論文のネタを探している人には格好の資料にはなると思います。
ちょっとフォローになりますが
数値・データ等よく調べられており分かりやすい本であり
前書と異なって日本軍の優れていた部分・最終章に自衛隊への提案も述べられるなど
著者の善意・熱意も伝わってきます。
要するにカジりやすい本であると言えます。
ただし
もっと本格的に組織論を学ぼうとする人には勧められません。
現場・現物のリサーチが甘く,
机の上で考えた風・今の世にはびこる評論家風の内容に満ちており
残念ながらもっともっと他に良い本があると思うからです。