堅い書名ですが、実際はもっと取っつきやすく、知的好奇心を満たしてくれる歴史啓蒙書といった風情が漂っています。なお、折り込みの「グレート大阪市全図」を広げながら現代の大阪と見比べると大変興味が湧くことでしょう。
60ページからの天王寺で行われた第5回内国勧業博覧会見聞録は実によく出来ています。当時の生活スタイルや風習、言葉づかいを考証したもので、読み手に分かりやすく雰囲気を書き記した筆者の力量に感服しました。また居留地・府庁・遊郭のトライアングルは面白く読みました。立地に意味があったわけです。
本書の内容は多岐に渡りますので、章立てを御覧になるのが一番でしょう。
怒涛の明治維新〈明治前期〉
第一図 新雕大坂細見全図(明治十六年〈一八八三〉) 明治のはじめ、四つの区があった 明治十六年の梅田ステーション 明治の大阪の象徴 学校の転変に見る明治 街のかたちが変わった 市制公布前夜の大阪
第二図 御免遊女町松嶋廓之図(明治元年〈一八六八〉) 近代大阪最大の遊廓の計画図 居留地対策としての松島遊廓開設 目論見はずれる 祭りと芸能と戦争と 遊廓計画図が語るもの 松島の四季
閑話一 工業都市の産声 大阪府重要工産地図(明治二十年頃)
博覧会と人力車のころ〈明治後期〉
第一図 大阪市と博覧会全地図 明治三十六年(一九〇三) 博覧会に五百三十万人 二十世紀のはじめに 博覧会が描いた近未来の生活 第五回内国勧業博覧会見聞録
第二図 大阪市街図附人力車賃金表(明治三十五年〈一九〇二〉) 人力車が地図の主役になった 人力車、いちばん身近な近代風景 爆発的な普及で庶民の足に 賃金表が語る車夫という職業 明治のもうひとつの顔 人力車でめぐる大阪名所 巡航船との乗客争奪戦
第三図 古今対照大阪市街地図(明治四十一年〈一九〇八〉) 古代・中世・現在にまたがる時間地図 古代の上町台地を彩るもの 千七百年前と今をつなぐ 中世の大阪へ 星と鉾流しと天神祭 明治の大阪と秀吉の影 鉄道地図が塗り変わった明治三十九年
閑話二 築港図に見る時代の転換 明治三十年築港着手当時之図
市電にゆられ新名所遊覧〈大正時代〉
第一図 大阪市内外電車便覧 電車系統線入大阪市街地図(大正九年〈一九二〇〉) 市電網が地図を塗り変えた日 市電開通と近代化の加速 市電が生んだ四ツ橋筋 「電車町程表一覧」が語る市電の時代 市電唱歌の近代風景
第二図 大阪遊覧案内地図〔裏面・京都名勝遊覧図〕(大正十一年〈一九二二〉) 交通網が四通八達、遊覧時代の地図 中心がいくつもある関西遊覧圏 聖天、天満宮、泉布観が北部の三名所 南北の「御堂」はじめ中部は歴史の色濃く 新旧が渾然となった「天王寺公園」が南部の顔 遊覧所の起点がなぜ四ツ橋なのか 「大阪市区改正設計」が意味するもの
閑話三 裏面が面白い地図 大阪案内地図 楽天地案内及高野山總本山指定旅館 (大正初期)
大大阪とパノラマの時代〈大正末期〜昭和初期〉
第一図 大大阪明細地図(大正十四年〈一九二五〉) 大大阪誕生の瞬間をとらえる 大大阪の半分を緑地に 二百十一万人から三百二十五万人へ 大大阪の設計図 都市計画の光と影
第二図 御大典記念新版大阪府庁御認可 グレート大阪市全図(昭和三年〈一九二八〉) 昭和のグレート大阪を描く 大正の大大阪、昭和のグレート大阪 「珠玉の名蹟」三百五十余箇所 歴史の都としての大阪 明治以後の名蹟
第三図 大阪府鳥瞰図〔吉田初三郎作〕(昭和七年〈一九三二〉) パノラマの時代に人々が夢見たもの 吉田初三郎が描く新旧ランドマークの競演 天守閣と師団司令部の風景 造幣局がなく梅田がふたつある パノラマ地図の目線 細密を追求、美濃部征治郎のパノラマ地図 内から外へ、時代とともに変わる視点
閑話四 ローマンスカーは昭和の香り 新京阪電車沿線御案内(昭和三年)
近代古地図散策
第一図 大阪市街全図(発行年不明) 近代古地図、発行年を読み解く どこから推理をはじめるか 年代判定の目印 大きな目印がある 市電がじつは南海鉄道だった
閑話五 鉄道地図から見た昭和の京阪神 最新全日本鉄道地図(昭和十一年)