この本はよく『我が闘争』の続編と位置づけられているが、結局は出版されなかった
「草稿」である。従って、この文書の真贋や作成時期の推測も含めてかなり議論のあった
文書であった。
しかし学問的研究からほぼこの草稿は本物で、作成時期も内容からほぼ固まって
いるらしい。そのあたりは本書の訳者(平野一郎氏)あとがきにかなり詳しく
解説されている。
内容は、『我が闘争』に比べて少し突っこんだ議論が見られるだけで、あまり
かわり映えはしない。あとがきにあるように米国に対する意見が述べられている
ことと、言葉の調子が激烈になっていることが目を引く。おそらく前著から数年
の間隔があり、しかもその間のドイツを取り巻く環境が激変していたことを
思えば、書いてある内容が代わり映えしないことは驚くべきことであり、
政治家としてのヒトラーが、いかに固定した観念を持ち続けていたかを明らかに
してくれる史料のひとつでもある。
ヒトラーの思想について、概説書ではあきたらず彼の言葉で知りたいという
向きには、『我が闘争』よりも短く、端的な言葉が使用されているため彼の
考えがよくわかる本書は、良い参考書になるだろう。