「ニノチカ」(1939)の(ブロードウェイ・ミュージカル化を経ての)再映画化で、アーサー・フリード製作、フレッド・アステア、シド・チャリシ主演のMGMミュージカル。設定は若干変わっているが、ソビエト共産党員のニノチカ(チャリシ)がプレイボーイ(アステア)とパリで出会い恋に落ちるという大枠は共通。他の出演者は、ジャニス・ペイジ、ピーター・ローレなど。
傑作「バンド・ワゴン」(1953)以来の共演となったフレッド・アステアとシド・チャリシは、この作品でも息の合ったところを見せる。いつも通りエレガントなアステアははまり役で、チャリシも冷たい仮面を脱ぎ捨て女性らしく変身していく役を好演。2人にとって最後となるMGMミュージカルに相応しく、エレガンスに満ちた小粋な作品になっている。エスター・ウィリアムスを思わせるスター役のジャニス・ペイジや、気弱な共産党員役のピーター・ローレらも作品に彩りを添える。
もちろん最大の見所はコール・ポーターの楽曲によるミュージカル・シークエンスである。アステア=ロジャースを髣髴させるエレガントな「All of You」と、快活なメドレー「Fated to Be Mated~Paris Loves Lovers~All of You」での主演2人のデュエットダンスは流石の出来映え。また、チャリシのソロ「Silk Stockings」は、ニノチカが資本主義の象徴だと軽蔑していた絹の靴下を初めて身に付け女に目覚める様子をバレエで表現した、美しく官能的なナンバー。その他にも、アステアが渋い歌声を聴かせる「Paris Loves Lovers」、過渡期にある当時の映画界を風刺した「Stereophonic Sound」、シネマスコープを効果的に使ったダンスナンバー「Red Blues」、アステアによるR&R(!)「Ritz Roll and Rock」など、バラエティに富んでいる。