良い本です。一読の価値があります。
非常に広く、深く情報を集めている力作なのですが、少しだけ残念な部分があります。
まず、平岩米吉の「ニホンオオカミは本来人を襲うことがなく、日本では益獣、そして神の使いとして崇められてきたが、海外から狂犬病が入ってから立場が一変した」という考え方にあまりにも依拠しているのが残念です。
この誤った歴史観はニホンオオカミを語るとき、必ずと言っていいほど基調とされるものですが、実際には赤穂浪士を美談にするのと同じくらい間違ったものの見方です。
せっかく、外国の方が書いた本なのですから、そういったところをちゃんと検証して欲しかったのですが...。
また、明治以降の日本の西欧化に対して、少しセンチメンタルすぎはしないでしょうか?
私も明治維新に対しては否定的な見解をもってはいるのですが、女工哀史とか蟹工船のイメージで明治をステレオタイプ化されても面食らいます。
それと、第6章の「オオカミ絶滅理論と日本の生態学分野の誕生」については、もしかしたら翻訳のせいかも知れませんが、読んでいて嫌な感じがしました。
何というかシニカルな感じがします。
以上、気になった点をあげ連ねてしまいましたが、それでも良書であることに変わりはありません。
特に、巻末に50ページもの脚注があり、日本のみならず海外の参考文献が多く掲載されているのは本当に素晴らしいの一言です。
ニホンオオカミについて、ご興味のある方には、是非御一読をお勧めします。