紫穂と皆本が過去の薫と出会う話と、兵部と不二子を中心とした超能特務部隊の話の2つが収録されています。どちらも登場人物達の内面に抱える葛藤、それを克明に描いていてとても興味深く読めました。普段のほほんとしている人でも、その実他者への隠された思いというものはやはりあるものなんですね。
幼い頃のチルドレン3人、一番不幸だったのはあるいは紫穂だったのかもですね。もちろん他の2人も家族のことでそれぞれ問題を抱えていて、誰がより不幸かということについては議論の余地があることでしょうが。しかし、その能力により否応なく子供の身でありながら大人の論理に正面から向き合わされまた理解してしまった、させられてしまった紫穂は、よくあの程度のひねくれ具合で済んだものだと思います。
兵部はホントにしかし、早乙女大尉に裏切られるまでは素直ないい子だったんですねえ――。対して不二子は、自分が社会の異分子であることを自覚しつつ、それでも虚勢を張って「私は弱くない!」と声を大にして言い続け実力を見せ付けそのプライドを守っていたみたいですね。姉ぶってかくも兵部に弟意識を植え付け自分に逆らえなくしていたのも、兵部の徐々に伸びてきていた能力を自分に向けさせなくする=自分より強いと証明させなくする、そういう防衛行動だったのでしょう。強者は強者を知る、もっとも早乙女大尉もこれについては不二子に劣らない賢察ぶりを発揮させていたみたいですが。
時代考証について「間違えたらごめんね」的な記述多数、椎名先生もどうも軍事関係などの描写に苦労している様子。まあこの絶チルはフィクション作品な訳ですし、どこまでも史実に忠実にと縛られることもないのではとは思います。――もちろん「こっちの史実」に正確なら、それに越したことはないでしょうが。少女時代の不二子がとても可愛らしかった28巻、次の巻も待ち遠しいです。