郷愁というのは、ほんとうはどこにもないふるさとに対する憧れである。
私は宇佐美英治さんのこの一文が好きだが、石井好子さんの文節によるリズムのある文章の響きはまさにそうであった。
織田廣喜さんも同断である。
おそらく異国であるからこそ真の故郷であるような望郷を感じられてきたのであろう。
ただ、絵につけていただいた絵解き文でもなく、文の装画でもない。
(米倉守 あとがきより)
モンマルトルの丘はダミアとよく散歩したものだった。
戦前から毎日ダミアのレコードを聞き、あこがれに胸をときめかせていたダミアと一緒に歩くという幸せに酔った。
「マリーズ」バーのおっさんが、八百屋のおかみさんが声をかけ、ダミアは独特のかわいた声で笑った。
丘の上にはユトリロの家があった。
「友達だった」とダミアは言った。
(石井好子 本文「ド・ラトゥール・ド・ヴェルニュ街 三十四番地」より)
[体裁]
判型:B5変型判
カラー図版34点、デッサン4点、ポストカード2葉付
織田廣喜(おだひろき)
1914年、福岡生まれ。
1939年、日本美術学校西洋画科卒業。
1940年、二科展初入選。
1960年、渡仏(以後、度々パリに滞在して制作)
1995年、芸術院賞・恩腸賞を受賞し、芸術院会員に就任。
1996年、碓井町立織田廣喜美術館開館。
石井好子(いしいよしこ)
1942年、東京芸術大学声楽専科卒業
1952年、パリでデビュー。
以後、シャンソン歌手として国内外数々の舞台に出演。
1990年、第32回日本レコード大賞特別賞受賞。
1991年、日本シャンソン協会会長に就任。
1992年、フランス芸術文化勲章「コマンドール章」受章。
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