タイトルになっている「絵はがきの時代」とは、19世紀末から第一次世界大戦にかけて、世界のあちこちで人びとが絵はがきに熱狂した時代を指している。当時、絵はがきの展覧会や交換会、絵はがきの専門雑誌が発刊されたりしたそうだ。
一般のひとにとって絵はがきとは、観光地で買う風景写真や、博物館などで販売される所蔵作品の写真などであって、なんでこれがコレクションの対象になるのか不思議に思われるに違いない。著者は前著『浅草十二階』の資料集めがきっかけで絵はがきを「繰り始めた」。絵はがきを眺めることによって、発行された当時の「風景」を知る手がかりになるからだ。
本著で紹介されている絵はがきは、書き込みがあったり、画鋲のあとがあったりする使用済みの絵はがきである。著者はそこから差出人を初めとする、絵はがきが辿った道を知り、また絵はがきの持つメッセージを読み取って読者に伝えようとしている。
表紙や口絵の絵はがきの写真が美しい。また文中にも多くの珍しい絵はがきが満載されている。文章がとても読みやすく、わかりやすい。まるで著者と一緒に旅をしながら、旅先の解説をしてもらっているようだ。ひょっとしたら、読者を絵はがきをめぐる旅に誘うのが著者の目的だったのかもしれない。絵はがきに関する興味深い歴史の逸話も紹介されているので、永久保存本としても最適。