一点だけ欠点があるとすれば、「はじめに」に書いてあることが、良い意味で裏切られていること。「はじめに」には、「・・・本書は全く数学の知識を仮定せずに統計学を解説し、・・・」と書かれていたので、肝心なところはいい加減な説明に終始するのかと心配したが、そんなことは無かった。もちろん、本格的な数理統計学の教科書(ボレル集合の登場するような)には及ばないが、統計に関わる多くの人には十分に納得できる説明になっていると思う。推定量の良さを表す不偏性、十分性、有効性の定義とか、中心極限定理とか、きちんとポイントを押さえている。特に、中心極限定理については定理自体だけでなく、統計で利用するときの意義(信頼区間の推定)まで説明されている。ただし、自由度に関する説明だけは、少し改善すべきかもしれない(χ二乗分布がt分布より後に登場していたりする)。
日頃、意味があいまいなまま使っている用語が、きちんと定義されており、ハッとさせられることが多かった。例えば、統計用語としての「変動」の定義、皆さんはご存知ですか?偏差、分散、標準偏差の定義は言えても、変動の定義を言える人は少ないのではないか?
また、エクセルの統計用関数がいろいろと紹介されている。今までは自分で数式で組んでいたところを、これからは簡単に書くことができそうだ。
まだ最後まで読み終えていないが、多くの人に自信を持って推薦できる本だ。
PS.変動とは偏差平方和の別名です。
追記:★をひとつ減らして、4つにする。全体を読んでみて、気になることが2つあった。(1)t分布が母平均の区間推定にだけ使われており、検定には登場しない。本来、2サンプルt検定でt分布を使うべき状況で、なぜか、標準正規分布によって検定すること(2サンプルZ?)になっている。(2)大数の法則の説明で中心極限定理を使っている。大数の法則は、中心極限定理を持ち出すことなく、チェビシェフの不等式で証明できる。