この本は近代統計学の流れを分かりやすく示してくれる.数式はひとつも出てこないが、統計学をまったく知らないと興味は少し減るかもしれない.しかし、それでも統計学が社会にかかわり、影響を与えた歴史がわかるので、統計学アレルギーの人にもおすすめと思う.全29章の間にピアソンとフィッシャーから始まり、ブリス、ベイズ、ネイマン、ゴセット、コルモゴロフ、デミング、スネデカー、テューキー、コックス、など多数の著名な統計学者が登場する.全29章のうち第1章から19章くらいまでがとくに面白い.フィッシャーはピアソンの冷遇と圧力から逃れるためにロザムステッド農業試験場に就職させたが、これが彼に人生最良の時を与え実験計画法が生まれた.ネイマンは憧れのルベーグに会ったとき冷たくあしらわれ、これを反面教師として学生にとても親切になったという.インドの富裕な学者マハラノビスは自分の土地にインド統計研究所を建て、そこから世界の統計学者ラオが育った.数学、物理学、生物学、哲学に偉大な足跡を残したソ連の天才コルモゴロフは、ローマ教皇史に詳しく、講義でプーシキンの詩をそらんじた.などなどエピソードが豊富に紹介されている.こういう話を交えてもらえたら、統計学の講義ももう少し身近になったかもしれない.