比較的評価が高かったので読んではみたが、とんでもない期待はずれであった。
統計力学が苦手だったので入門書として評価がたかい本書を手に取ったが、期待が高かっただけに失望を通り越して憤りを感じてしまったほどだ。(これは私の勝手な感情だが)
本書は入門書としての位置づけらしいが、説明が極めて不親切で読者に対する配慮が皆無と言っていいほどなされていない。たしかに、日本語としては平易な言葉遣いで一見分かりやすそうな説明であるが、初学者が誤解しそうな表現や厳密性を欠く記述が終始目立った。入門書としては相当不適切に感じられた。(入門書だからこそ丁寧に根拠を述べ、読者を分かった気にさせるような誤解を招く記述は避けるべきであり、入門書としての程度を超えるようであればこの旨を断った上で「他書に譲る」などと明記すべきである。)その根拠はたくさんあるが、私が読み進めるにあたって常に感じていたことを挙げる。
・入門書と謳っている割に式変形に省略が多く初学者が統計力学の本質を学ぶのに煩わしい
・断りなしに近似を使い、どのオーダーを微小項として切り捨てたかが不明確
・そのうえ、近似した式を「=」で繋いでいる
・全体の構成の見通しが非常に悪い(初学者にとっては見知らぬ土地を地図も持たされずに目的地も知らされず、いわれるがまま歩かされているで様であろう)
細かく挙げればきりがないが、以上のことから私は本書を決して推薦しない。入門書として不適切であるが、(厳密性の欠如や扱っている内容から)当然標準的な教科書や進んだ専門書としても値しないことは言うまでもない。
本書を高く評価している読者は、既に統計力学を学んで上に挙げたような「欠陥」を(無意識に)埋めるだけの力があるか、著者に分かった気にさせられているとしか思われない。
これから統計力学を学ぶ学生で本書の購入を検討している方はぜひ、最初の3章当りまでを軽く図書館などで読んでほしい。決してここにある評価だけで選ぶべきではない。
また本書を読んで私と同じ感想を抱かれた方は田崎晴明『統計力学1 』『統計力学 2』を進める。この本は読者に対する配慮が行き届いている。