かつては人格が荒廃する不治の病「精神分裂病」として恐れられた統合失調症について、入門的な知識から最先端の理解や治療法まで、非常に詳しく論じている。そうとう専門的であるにもかかわらず、非常に読みやすい。具体的なケースのエピソードも興味深く、歴史的なエピソードなども読ませるものだ。神経学的、遺伝学的メカニズムなども、かなり詳しく説明てしてあり、目からウロコの内容も多かった。ことに三割以上の人が、統合失調症の関連遺伝子をもっているということには驚かされた。今日では高い寛解率が得られるようになると同時に、社会的要因が、回復を鈍らせる状況もあるといい、社会的な角度からも、深く追究している。途上国の方が回復が優れている点や就労と回復の関係など、示唆に富んでいた。統合失調症への著者の温かいまなざしが感じられた。臨床医として、精神医学者として、作家として、力のこもった一作で、この手の本としてはなかなか読みごたえがあった。