統合失調症についての認知行動モデルからの説明と症例提示から本書は構成されている。
統合失調症は伝統的に遺伝要因が強く、精神療法的な接近は不可能と言われてきていた。その為、僕も最初に精神病院に勤めた時には、幻聴や妄想について当たらず障らずに関わるように言われていた。陽性症状を否定しても抵抗が強くなるし、肯定しても助長させるだけであるという理解が根本にあったからだと思う。
しかし、最近の研究では単純にそのような理解はせず、様々な技法を駆使して陽性症状のみならず陰性症状に対しても関わっていくことができることが示されている。そこには、統合失調症の様々な症状は遺伝的な影響が強いとは言え、健常者の体験と連続線上にあり、質的な違いはそれほどないということが明らかになってきたことも関係している。
本書の1部では、そうした統合失調症の諸症状や各種の特徴を網羅し、様々な研究を提示して、概説している。また2部では症例を提示しながら、そこで使われている各種テクニックが紹介されている。ただ、症例についてはあまり具体的に提示されておらず、実際にどのようなツールを使い、どのように施行しているのかがやや見えにくい印象であった。また、3部では今後の展望として治療効果を評価しているが、まだ研究途上なのか、どのような研究をして、どのぐらい効果があるのかが明記されていなかったところが残念なところである。