1958年に起こった小松川女子高生殺人事件を題材にした映画です。この事件をモデルや題材にした作品は、大江健三郎の「叫び声」ほか深沢七郎の短編、福永武彦の短編、オムニバス映画「二十歳の恋」の石原慎太郎監督部分などたくさんあります(三島が書いたものも読んだことがある気がします)。この大島作品は佐藤信の戯曲「あたしのビートルズ」と並んで他のどの作品よりも犯人李珍宇と彼を生み出した日本の戦後社会の本質に迫るものだと思います。また私の中では大島作品の中でもトップ3に入る、当時の前衛劇の流れを反映した演劇的作品です。
他のレビュアーたちから不評の小山明子演じる「姉」には実はモデルがあります。獄中の李と書簡を交換し、63年に「罪と死と愛と」を出版した朴寿南で、往復書簡の中でも姉を名乗り、李に寄り添い続けました。政治的立場もこの映画の小山明子に近いものがあります。ただし大島監督は異化効果としてマドンナの(マドンナという存在そのものが異化)小山明子に政治的、学際的アジテーションをいろいろな映画でさせていますので(たとえば日本春歌考での日本人騎馬民族説演説など)、小山明子の役廻しはそのような視点で理解するべきと思います。