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23 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
2010年代SFの劈頭を飾るにふさわしい濃厚な1冊,
By Fenomeno Agradavel (japan) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫) (文庫)
2010年発表の13編(漫画1篇含む)と創元SF短編賞受賞作1編を含む年刊アンソロジー。一推しは長谷敏司「allo, toi, toi」。変態性欲が何故起こるのか、「好き」という言葉でくくられたもろもろの概念を適切に識別できない言語の曖昧さ、錯誤にその原因があるのではないかという視点を基盤に、ある小児性愛者の囚人と、彼に「好悪を仕分けするソフトウェア」と「思考を文字化するデバイス」をつけてその性格改善の実験をする技術者の2人の視点を切り替えながら、性的倒錯の基本構造とその治療の可能性を緻密に考察している。科学技術アイデアを用いて純文学的なテーマに取り組んでいる作者の、現時点での頂点に位置する大傑作。この作者はむしろ、一般文芸誌に書いたほうが評価されるのではという気がする。 他で特に面白かったのは伴名練「ゼロ年代の臨界点」。1900年代の架空の日本SF黎明史を流麗な文体でつづった強烈な架空歴史「評論」。架空の日本SFを作り上げた3人の女性のキャラも立っているし、折々に紹介される架空のSF作品の着想やあらすじが面白すぎるし、SF的なオチに至るまで完璧。角川ホラー大賞でデビューした作家だが、今後のSF作品に期待したい。 瀬名秀明「光の栞」は「生きた本」をめぐるハートウォーミングな秀作。去年の瀬名作品は総じてレベルが高かったが、特に河出文庫「NOVA」シリーズ掲載の「希望」は、オールタイムベスト級の大傑作なので必読。同題のハヤカワ文庫の短編集にも入っている。 創元SF短編賞の西島伝法「皆勤の徒」は、社長(という生物)にこき使われる従業者(という生物)の視点から、いずことも知れぬ惑星の海上の製臓工場での悲惨な日常生活を、造語多用のグロテスクな異形文体でねちっこく描いている。文体・内容ともにこれ見よがしに奇を衒って異化しながらも、使い捨てにされる工員の悲しい日常を隠喩しているような内容に共感すらできてしまうのが面白い。労働基準法や雇用均等法など、ところどころに普通の名詞が顔を出すのがユーモラス。強烈な文体がインパクトの8割近くを占めているものの、物語としてもなかなかよくできている。 他の作品もバラエティ豊かで、かつ凡作が少なく、過去の年刊アンソロジーでは最もレベルが高い1冊だと思う。ちなみに、(個人的には佳作程度の印象だが)星雲賞受賞の小川一水「アリスマ王の愛した魔物」も収録。 ※一点苦言を呈するなら、異形コレクションはいいとしても、編者が重なるNOVAからの収録は極力控えて欲しかったと思う。
17 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
2010年はSF短編豊作だったのだなと良くわかる名アンソロジー。自分は再読が多かったので星一つ減。,
By
レビュー対象商品: 結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫) (文庫)
選者も書いておられますが、こうして固めて読むと2010年は直球の『SF』が多かったのだなと感じます。私は理学部で宇宙物理を学んでおり宇宙ものはもちろん大好きですが、ことSFを読むにあたっては科学っぽさや正確さよりも、うまく驚かせてくれることを期待しています。 センスオブワンダーですね。 好き嫌いでいうと今回は半分以上が好きで自分には合わないなというのが数編。 過去も広い範囲から選んでいる選者が、今のジャンル状況を表してくれたのだなと思っています。 自分が、好きなのはアイデアで勝負して多少の無理は筆力で読者を引っ張りきってしまってくれるような作品。 今回では、「アリスマ王の愛した魔物」が一番です。 表題にも書きましたが、私はSFマガジン、異形コレクション、NOVAを読んでいるので再読が多かったのは残念です。 SFマガジンが一回日本作家特集をするとそこから数編年間ベストに選ばれてしまうというのは、SF短編の発表機会が少ないからなのでしょう。 もっと沢山の作品が出回り年間ベストに注目が集まるような出版状況になって欲しい。 ジャンル的に電子書籍に抵抗がない読者が比較的多いと推測するので、Kindle他の端末での出版を東京創元社様や早川書房様に推進してもらいたいと感じました。 ここで書いてもとは思いますが、出版社様には在庫負担が無くなるし、読者側には絶版リスクがなくなるのだから大歓迎ではないかと思うのですが。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
シリーズも4冊目,
By モトカ (大阪府) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫) (文庫)
2010年度に発表された日本のSF短編の年刊傑作選シリーズも4冊目 今回はストレートにSFと思える作品が非常に多かった もちろん、アンソロジーとしても楽しめます そして、大森望氏による「二〇一〇年の日本SF界賀概況」も掲載されています 2010年を振り返れますので、非常に役に立ちます 「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」冲方丁著 科学技術の進歩により、長寿が実現しつつある社会を描いた作品 胎児に抗加齢処置を施した夫婦が主人公 産まれて来る子供達が最初の世代であり、親達には抗加齢処置が施されていない 普通の寿命である自分達のことを、圧倒的に長寿である子供達は生涯憶えていてくれるのかといったような不安が綴られる 寿命が延びることにより、世代ギャップは拡大されるのだろうか それとも、逆に小さくなるのだろうか 「アリスマ王の愛した魔物」小川一水著 人力で「ラプラスの魔」を実現する話 大森氏の解説にもありますが、小林泰三著「予め決定されている明日」は計算する立場の話だが、本著は計算をさせる立場の話 でも、やっぱり「ラプラスの魔」を実現するのは無理な気が・・・ これをいったら、野暮か 「完全なる脳髄」上田早夕里著 色々制限を加えられている一種の人造生命体がその呪縛から逃れるため、抵抗する SFとしても面白かった そして、悪意にこそ人間性が宿るといった背徳感や暴力描写にある種の爽快さが感じられた 北野勇作氏もよくバイオSFというか、人造生命体ものをよく書いているが、 北野氏の作品は、基本もの悲しい雰囲気だ 近年の作品は全体的に現状を受け入れ、諦観してしまっている内容のものが増えている気がする(ただし、ラノベは除く) 現状を打破する、抵抗するといった力強い作品に出会えて楽しかった 「五色の舟」津原泰水著 既読の為、今回は省略 「成人式」白井弓子著 コミックでした 著者の作品を読んだのは、初めてでした 異星を舞台にし、特異な生態系と、それに密接した儀式が描かれていた 異星人の造詣や文化が、あまりにも地球的すぎるのが少し残念だったかも 「機龍警察 火宅」月村了衛著 この著者の作品を読むのも初めてです 「機龍警察」シリーズの一編の模様 設定がSF的であるという点以外はミステリーというか警察小説です コンパクトな割には、見事にまとめられており良かったです 「光の栞」瀬名秀明著 雰囲気は非常に美しい作品でした しかし、よくよく考えてみると少しグロテスク??? 「エデンの逆行」円城塔著 著者の作品は小説だからこそできる独創性のある表現だとは思いますが、ちょっと好みではないので今回は冒頭で投げ出してしまいました すいません 「ゼロ年代の臨界点」伴名練著 同人誌、初出の作品 もちろん著者の作品を読むのは初めてです それにしても、幅広くフォローしていて関心の限りです 稚気に富んだ作品でした 創作活動をしたことはありませんが、偽SF史を造るのはなんだか楽しそうだ 「メデューサ複合体(コンプレックス)」谷甲州著 既読の為、今回は省略 「アリスへの決別」山本弘著 既読の為、今回は省略 「allo,toi,toi」長谷敏司著 「あなたのための物語」と同一設定の作品と思われる 「アリスへの決別」と近い題材を扱っている しかし、「アリス〜」の対象は空想であるが、本著の対象は実在 厭な話だった しかし、脳の情報整理のズレには非常に興味をそそられた 「じきに、こけるよ」眉村卓著 幻覚が見える老人の日常を綴った作品 悠々自適で自然態なようでもあり、孤独でもの哀しくもある 「皆勤の徒」酉島伝法著 第二回創元SF短編賞受賞作 非常に個性的な作品でした 異形な会社風の世界を舞台にし、漢字を多用と改行が少ない文体だった 著者自身が描いたイラスト数点も併録されています 濃密すぎて、途中で挫折してしまい、完読できませんでした
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