現代の「常識」に対する目は相変わらず辛辣だけど、その反面、地味で我慢強く謙虚で温かい人間・人間関係に対する評価が以前より高くなっている。著者が年を取ったのを感じた。そして私はやはりこの人の感覚が好き。
妻と二人で年を取って温かい老夫婦になれた男性が、結婚が人生の墓場になってしまった男性を優しく見つめる。
墓場夫婦のほう。こういう男性もこういう女性もそんなに珍しくはないと思う。リアルに想像できる。2人とも凡庸で未熟で、男性には一流大卒大手出版社従業員、女性には幼稚園から短大まで超お嬢様学校出身というブランドが付いているだけなので、結婚するのも子供を作るのも早すぎ。女性のほうには狭い世界における計算高さだけがあり、男性のほうはまだ人間も社会もなーんにも見えていない。
彼が37歳で1600万の年収を、結婚後6回の住居グレードアップのためだけの引越と娘2人の超高額学費に費やし、ローンに追われ、小遣いは月1万円で、完全に人生の墓場に入ってしまってから、ずっと昔の恋人の消息を知り、その筋の通った立派な生き方に感動して泣く場面は切なかった。本当に素晴らしいね、でもそんな立派でしかも聡明な人のほうがずっと少ないんだし、決してアナタが特別ダメでアホだってわけじゃないよ…と慰めたくなる。どう見てもイヤなヤツではないし、責めることはできない。著者の彼に対する視線も割と温かい。たまに辛辣な一言が笑えるけど。
興味深いのは、社会人になってからも「聖マル出のコ」と言われるほど有名なお嬢様学校に幼稚園からずーっと通って、どういう人間が出来上がるか。奥さんも、長女も、次女もそうなるというホラーみたいな話なんだけど、私はお嬢様学校出身じゃないしそんな友人もいないから想像しにくい。ただ好奇心が湧く。「聖マルタ女子学園」ってどこーっ??