「理論経済学の本質と主要内容」に続き、第三作「経済学史」とともにいわゆるシュムペーターの若き日の三部作を構成する第二作。第一作で静学と比較静学の立場に禁欲して理論を立て、その結論から本書で動学理論を構築し、「経済学史」で新古典派総合に繋がる経済学のオーソドックスを確立するという、着実に手続きを踏んだ議論を繰り広げていく。とは言うものの第一作の内容は必ずしも前提とはされておらず、本書一冊で読みきれる形にもしてある。連続で読んでいくやり方と単独で読んでいくやり方、どちらも効くのだと思う。
議論の進め方としては前の作品のようなメタな視点よりも、実際の動学理論の中身が語られていくつくりなので、読みやすい。
構成としては、第一章で定常的な経済循環を静学の枠内で固め、そこには変化や発展の興る余地がないように設定した後で、そんな循環に対して発展を齎す要素を信用・資本・企業家という機能に見て、第三章以下の各論につなげていく。上巻は、第一章「一定条件に制約された経済の循環」第二章「経済発展の根本現象」第三章「信用と資本」を収録。
読み進めていくと、動学的発展の説明をそんな風にしていくのか、というモデルの作り方の巧みさが目に映った。一見発展への活路を企業家に見出したのが突飛に思えるが、普通言われる企業家とここの企業家はずいぶんと意味合いが違い、スペキュレーターというかパイオニア、チャレンジャーといった語感がより近いかと思わせるし、そんな独特の意味合いを持った企業家に購買力を付与し企業活動を可能にさせる意味で信用と資本が効き目を発揮するという見立ては、狭いように見えながら広い範囲をカヴァーする説明になっているようだ。下巻を読んでいくとそのことはよりはっきりするのだろう。
経済循環と経済発展を静学ー比較静学ー動学の筋に絡めて論じ、現実の経済を捕捉しようとする著書。下巻も楽しみ。