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9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
何のための経済成長なのか。,
By けるよ (鹿児島県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 経済成長という病 (講談社現代新書) (新書)
この本のことは知りませんでしたが、日頃から経済成長一辺倒主義の現状に疑問を持っていた私としては、ビジネスの最前線の現場にいる人からの、現在の経済システムの 異常性を真正面から指摘する鋭い批判に、おおいに共感しました。 本書における著者の思考の背後にあるのは、秋葉原事件への言及からも窺えるように、 その当事者性であると思われます。現在メディアで目にする社会問題への言説の多くは、 自分とは関係のない理解不能な出来事であり、自分たちとは隔離する方向での対処が要 求されており、著者はそこに疑問を感じているようです。 著者は、ビジネスの現場で自分の感じた、今世紀初めの価値観の変化の原因を突き詰める ところから、欲望を無条件に肯定する社会の帰結としての、世界的金融危機と秋葉原事 件という、身近で、しかし感覚的には遠い現象にまつわるあれこれを思索します。 それらの出来事の因果関係は、短絡的に結びつけられませんが、同じ時代背景の何かを 共有しているように見てとれます。 誰かの強欲でも、異常性でもなく、自分の欲望や、自分が日々平常でいられる偶然性に ついて想いを至らせる、そんな自覚を持って欲しいと著者は願っているようです。 その中で著者の言う、現在の少子化による人口減少は経済成長の結果であり、むしろ 適正化されているのではないか、よって、経済成長のために少子化を防ぐという考えは 本末転倒ではないかという疑問は、一見突拍子もないように聴こえますが、頭から否定 はできないように思えます。 もしそうであるならば、著者も言うように、政府の取るべき政策は無意味な少子化対策 ではなく、人口減少社会に即した環境整備を行うこととなってきます。 著者は、政府が経済成長に固執する原因を、昨今の若さへの過剰な固執と重ねて見てい ますが、確かにそのような面は否定できないと思います。 私はそれに加えて、高齢社会を支えるための労働力の確保や、自分たちの生活レベル維 持のためという、どこまでも自分たち本意の思想が全面に出すぎている気がしてなりません。 これらも人間の正直な気持ちとして否定はできませんが、労働力としてしか期待されな い子どもや母親たちが、それを拒否するのは当然のことに思えます。 かつての、「女は生む機械」発言への激しい反発も、背後にこのような意識があったの ではないかと思われます。 そもそも、少子化と経済成長を短絡的に結びつけるのも、疑問の残るところではあります。 本書は、タイトルと内容のズレがある気もしますが、将来像の見えない現代の問題を 考える上で、様々な示唆を与えくれる優れた本だと思われます。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
タイトルに関する内容は半分くらい,
By 吉田 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 経済成長という病 (講談社現代新書) (新書)
内田樹氏の盟友平川氏の経済評論。著者も認めているように、様々なエッセイの寄せ集めであるので、経済成長を理論的に批判した内容とはなっていないし、半分くらいは経済成長とは全く関係がない。結論ありきの我田引水の内容で、経済成長批判としては読むに耐えないが、エッセイとしては読みやすく、切り口が面白い。
33 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
地に足のついた、逡巡する知性,
By
レビュー対象商品: 経済成長という病 (講談社現代新書) (新書)
一人称を「俺」で語る、ある会社経営者のブログがある。一人称が「俺」だと聞くと、内容もなにやら威勢がよく、がんがん読者を引っ張っていくマッチョなそれかのように思えるが、そうでもない。一つのことについて、時に迷い、ためらいながらも、じっくりと少しずつ、黙々と歩みを進める登山家のような、他人に振り回されず自分で考えようとする実直な思考がいつもなされている。「案内人」としては少々心許ないが、誠実さがそこにはある。それが平川克美のブログに持つ僕の印象だ。 本書は書籍という形態からか、一人称が「私」にはなっているが、持ち前の誠実で、物事を深く正確に射貫こうとする、地に足のついた思考は健在。 本書は話題の中心こそリーマンショック以降の金融危機となっているが、かならずしもそれだけには収まらず、その他のいろいろな「時代の徴候」に目を向けている。あとがきで話題が散漫になったことを詫びながら平川は、この一見異なった事象のそれぞれに―短絡的な原因結果として結びつけることは諫めながらも―見えないつながりがあるのではないか、とも明かす。 もしかすると、その時代の徴候として、世界的な金融危機が偶然にも最初に起こっただけなのかもしれない。 僭越ながら、平川氏のことを「逡巡する知性」と名付けたい。どんどんと先へ進む人には、地面のめくれかけている小さな襞の部分が見えない。それは、足下を見ながらとぼとぼと、時々立ち止まったり、振り返ったり、はたまた引き返してしまうような人にしか目に入らない、何かの徴候だ。そしてそのような徴候としてしか、時代が根本的に変わるという瞬間は感じ取れないのかもしれない。 この「逡巡する知性」こそが、今の時代に求められていると、僕は思う。
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