関東大震災、戦後復興、阪神・淡路大震災の経験を参考に、東日本大震災からの復興策を提言しています。著者は金融論と都市経済学の専門家なので、本書が扱う内容は、復興予算の規模とその財源、後の経済興隆につながる復興のあり方、といった大きな枠組みの話が主となっています。
著者は日本経済には大きなデフレギャップがあるとの前提に立ち、インフレ目標を設定した復興国債の日銀引き受けを提唱します。インフレ目標の水準は、当初4〜5%、その後は2〜3%とし、名目GDPの4%成長を持続すれば、数年のスパンでは国債の利払い費の伸びが上回っても、10年間で見れば自然増収が勝つので、増税ありきで考える必要はないという。国債の日銀引き受けはデフレを脱却する手段ですから、物価上昇率が目標上限に達したら終了し、市中消化へ移行します。
この議論は前提のレベルで「電力制約によって日本経済の生産余力が失われている可能性」を否定していますが、これまでのところデフレと円高が継続しており、震災前からの需要不足の状況に大きな変化はない(むしろ需要のいっそうの縮小が問題)とする著者の認識に、私は説得力を感じます。
ただ、著名な経済学者や国際機関による増税提案にも根拠はいろいろあります。結局のところ提案の違いは、日本経済の現状と先行きの認識の差に起因します。本書は著者の主張を支える理論と状況認識については詳しいものの、学者間で状況認識の違いが生じる理由、そして著者が議論の前提とする状況認識の方が妥当だといえる根拠は何か、といった点については、記述が不十分なように思えます。
復興財源問題の他にも、戦後復興における石橋財政の再評価、脱原発とCO2削減を両立する経済学者らしい処方箋など、本書には興味深い知見があふれています。過去の豊富なデータを織り交ぜてやさしく説いており、著者と意見を異にする方を含め、幅広い方々に一読を勧めます。