三橋氏の解説は氏の他の著作と同様にデータから実務的に説くスタイルで相変わらずの解りやすさだが,その正当性が木下氏のOR理論を基本にした革命的なマクロ経済論で完全に裏付けられたといえる.
木下理論によれば,経済空間には「通常経済」と「恐慌経済」という二つのモードが存在する.これら二つのモードでは,「セイの法則」や「リカードの比較優位説」の妥当性,あるいは小さな政府vs大きな政府など,経済環境での殆どのイシューで真逆の適合性を示し,あるべき経済政策も真逆なものになる.そして前者はバブルの発生・崩壊の後に必然的に後者へ移行する.リチャード・クー氏のバランスシート不況論を除けば,今まで経済学者達は恐慌経済なるものの存在に気付いていなかったのである.木下氏とクー氏の業績はノーベル経済学賞に値すると思われる.
本書は洞察力あふれる,しかし傾向の異なる二人の天才が奇しくも同一の結論を語り合う脱デフレ開眼の書である.今まで三橋氏提案の経済政策と経済学者らの主張との乖離に疑問を持たれていた方,日本経済の先行きに危機感を抱いておられる方々に是非ご一読戴きたい.