本書の狙いは、世の中で起きている格差の問題について経済学的な意味を考えることで経済学的な思考のセンスを身に付け、社会を視る眼を養うことである。ここで言う経済学的思考のポイントとは、
1)金銭的なインセンティブの観点で物事を見ること
2)物事の相関関係ではなく因果関係をきちんと押さえること
である。ただし、人々の行動原理には、名誉、プライド、価値観、使命感、生きがい等の非金銭的なインセンティブも大きく関係している。
1章、2章では、身長や美男美男度と賃金の関係、オリンピックのメダル数と人口&一人当たりのGDPとの関係を例に、こんなことも経済学者が研究しているのか?という驚きを提供し、経済学的な思考に対する興味を喚起してくれる。
そして、3章、4章では、現在から将来の日本が抱える問題について論考している。具体的には、'V章では年金の仕組みを例に年功賃金について検討し(賃金抑制のための成果主義の問題についても言及)、'W章では所得格差と再配分について取り上げている。
1〜4章では興味を引くようなトピックスを取り上げ分かりやすく説明しているため、単なる読み物として面白く読めてしまう。しかしながら、プロローグではこの本の目的として“お金がない人を助ける具体的な方法を提示することではなく、お金がない人を助けることの経済学的な意味を考えてゆくことである”と述べられており、エピローグでは所得格差の問題は“機会の不平等や階層が固定的な社会を前提として所得の平等化を進めるべきか、機会均等を目指して所得の不平等を気にしない社会を目指すかの意思決定の問題である”と指摘している。
本書を読む前にエピローグとプロローグを先に読むほうが、本書のポイントを明確にして読み進められるかもしれない。