本書は、日々のニュースで接する経済問題への一経済学者の見方を書いたものである。
一経済学者というのはもちろん、著者の伊藤元重氏だが、幅広い経済学者の見方を紹介しながら見解を述べており、一般向け読者を想定した文体なので読みやすい。
取り上げられる経済問題は、デフレ、財政問題、地域間格差、不良債権といった日本の経済問題から、ITバブル崩壊後のアメリカ経済、変動為替相場制、ユーロ圏と欧州経済、地域間貿易協定などだ。
2003年の本だが、本書にあるほとんどの経済問題は、今もって、解決していないばかりか、より複雑な問題になっている。
例えば、欧州経済。本書が出たときはユーロが流通しいて1年余りの時だった。その頃、著者が「ユーロはうまくいくか?」とイギリスの著名な経済学者に訪ねたときの答えが
「おそらく最初の五年から一〇年は大きな問題は出ないだろう。ただ、少し時間がたつと、共通通貨の抱えるいろいろな矛盾が出てくるはずだ。そのときが、ユーロという共通通貨の正念場であろう」
というものであり、まさしく、今の欧州経済の問題に当てはまる答えである。
本書では、伊藤氏はデフレ脱却に(いわゆるヘリコプターマネーを使って)インフレターゲティングをしきりに主張されているが、今はどう考えているのか知りたいと思った。
資金の需給でインフレが起きればそれはコントロール可能なものかもしれないが、2003年当時はGDP比140%の政府債務が200%の水準まで悪化した今では、ヘリコプターマネー=実質的な国債の日銀引き受けは通貨の信認を棄損し、結果、財政インフレが発生し長期金利が暴騰する事態にならないのだろうか?