本書は資本論第1巻の冒頭部分に重なるとされる。当初「資本(論)」という本は、副題の「経済学批判」という題の予定だったので、本書で走るつもりだったのか。自分は、資本論第1巻を読む前に、本書を手にした。大変辛い読書であったが、というのもウイリアム・ペティやヒューム、サー・ジェイムズ・スチュアートなど大学の学部生では、経済学上、あまりなじみの無い人たちが続出し、批判的検討が展開されるからだ。だが、労働価値説が、どうやらステュアート朝のペティらが唱え始めていること、現代の経済学の教科書の冒頭に登場する「貨幣数量説」が、ヒュームが唱えていること、などなど、どうも新しいとばかり思っていた概念が恐ろしく古いことを本書で知った記憶がある。後年、「資本」第1巻で、遥かに明快でこなれた「商品」の部分を知るにつけ、また、巷間喧しかった「価値形態論」は、「資本」で登場することを知って、先に資本論を読んでおけば良かった、失敗した、と思ったりした。しかし今考えると、本書のほうが、各学説の検討、歴史的事実を考察しながら筆を運んでおり、「資本」という本には無い魅力を覚え、先回りすることが良いとも言えない事を感じた。なお、本書は、「序論」と「序説」があり、「序論」には有名な唯物史観の定式なるものが顔を出すくだりがある。また、未完であった「序説」は、とくに「経済学の方法」という部分が非常に示唆的で、今日人気のある部分でもある。ここだけ読んで「定説」を確認するのも悪くないかもしれない。それにしても、出版しない著述にもかかわらず、後世圧倒的な影響を示すマルクスには、本当の才能を感じる。