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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
穏やかな経済,
レビュー対象商品: 経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000) (新書)
経済的な価値と自然の価値。これは今日私たちが直面している最も深刻な価値対立の一つだろう。産業革命を果たし、資本主義に邁進する19世紀のイギリスにおいて、この価値対立の問題を深く追求し、資本主義経済の理論的背景を与えた当時の経済学者たちを真っ向から批判したのが、本書で取り上げられるラスキンである。美しい自然と人生を尊ぶ「穏やかな経済」を選ぼう、というラスキンの訴えは、あらゆる価値を金銭的価値に一元化してきた伝統的な経済の限界があちこちで明らかになっている現代において、ますます切実に響く。著者はラスキンの思想を詳細に説明するだけでなく、その思想を古代ギリシャにまで遡り、功利主義、古典派経済学、ロマン主義、ガンジーの非暴力主義、ディープエコロジーに至る思想史において位置づけている。またラスキンの美術論や個人としての様々な活動を描くことで、彼の訴えが単なる一経済理論ではなく、彼の人生を導いた実践的指針であることをも明確にしている。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
芸術と経済の統合の可能性を感じる書,
レビュー対象商品: 経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000) (新書)
この本は、19世紀のイギリスで芸術評論家として活躍したジョン・ラスキンの経済思想を、ヨーロッパの経済思想史の流れとあわせて紹介している。アダム・スミスに始まった経済学は、やがて、人間を単なる経済的な利益を求める機械のように想定するようになった。 そうした思想に対抗する、ロマン主義の流れ、コールリッジ、カーライルらの思想が紹介され、ラスキンは、そうした流れの中に位置付けられている。 ラスキンは、ゴシックの建築が、職人達の自由な発想から生み出されたものであると、語っている。そのような思想を持つラスキンにとっては、人間を単なる経済的な利益を求める機械ととらえる、当時の主流な経済主義の思想には、まったく同意する事ができなかった。 ラスキンはさらに、当時の経済学が持っていた、経済的な利益の追求が社会全体の目標である、という根本的な考え方に異論を唱えている。経済はあくまでも社会の一側面であり、社会全体を統轄できるものであるとは、ラスキンは考えていなかった。 最終章では、ラスキンのエコロジカルな思想が紹介される。ターナーの風景画を高く評価していたラスキンにとって、経済的な活動の結果、自然が次々と破壊されていくことは、とうてい受け入れられる物ではなかった。 そうしたラスキンの思想は、プルーストやガンジーに大きな影響を与えた、というエピソードも紹介している。 日本では忘れられた思想家となってしまったラスキン。この書は、彼の思想が持っている現代性を、改めて思い出させてくれる。
5つ星のうち 3.0
著者の真骨頂は第3章?,
By renqing (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン (2011-09-25T00:00:00.000) (新書)
興味深い論点は幾つもある。1)Adam Smith の invisible hand の発想が、キリスト教ではなくストア派のマクロコスモスの考えからきていると指摘している点(本書pp.57-59)。この点は、西欧初期近代において新ストア派が欧州を一時期席巻したことと関連するだろう。 2)エコロジー思想史へのラスキンの位置づけ ←第3章1 3)プルーストとラスキンを《美についての実在論》としての見る観点。また、「風景」「土地」「失われたもの」を通じた自己の回復。つまり、デカルト的・唯我的な、内包的自我とは異なる、外延的自我の指摘 ←第3章3 4)ガンジーとの関連やディープエコロジーとラスキンの相違 ←第3章4 ただ、全体としていささか散漫な印象を持った。また、著者のJ.S.ミルへの評価への違和感(ミルの停止状態論⇒エコロジストとしてのミル、への目配せの欠如)もある。 もう少し構成を練りこむ必要があったと思う。残念だ。
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