大体の事は「商品の説明」欄に書いてあるが、基本的に本書は以下の主張で進む。
第一章&第二章:様々な財政破綻論がはびこっているが、日本は財政破綻しない+日本が真に財政再建したいなら、緊縮財政(増税&政府支出削減)でなく財政出動すべき。
第三章:デフレ下の現在は「構造改革、民営化、規制緩和」など競争力、生産力向上の政策は逆効果でデフレギャップ拡大を引き起こす。
これらは耳触りがいい上マスコミも持ち上げるので勘違いしやすいが、飽くまで「インフレ期に行う政策」であり現在は行うべきでない。←ここ重要。
第四〜六章:「近い将来中国が世界の経済大国になりアメリカにとって代わる。人民元はドルに代わり基軸通貨になる」ことは断じてないと中国経済を切り捨てたのち、ユーロ導入時のドイツの本当の理由と崩壊の原因、そしてソリューションまでを解説。
アメリカについてはオバマ政権「輸出を今後5年間で2倍にする」宣言を引き合いに出し世界同時バランスシート不況で買い手がないと指摘。
興味深い主張も散見されるので以下に箇条書きする。
・鳩山前首相と管首相は、95年に国会で財政危機宣言をした武村正義氏率いる新党さきがけ出身者であり、「緊縮財政の申し子、財務省の言う事を聞く小泉政権の後継」だ。
子供手当や農家戸別所得保障等で一見放漫財政に見えるのはそれが小沢一郎の「選挙対策」だからである(景気対策ではない)。←ここ重要
・郵政民営化は、郵便事業の民営化についてはデフレギャップ拡大の懸念を示しつつおおむね支持。
しかし郵貯については、既に民間銀行だけでも金余り状態だというのに郵貯が加わっても貸す先がないため金利低下を助長すると批判。
最後に著者の紹介を。
著者の武器は「環境適応主義」を貫く点にあると考える。
彼のアイデンティティは「中小企業診断士」である。
中小企業診断士は企業の損益計算書やバランスシートなど、飽くまで数値データに基づいて「各企業に最適なソリューション」を提供する。
その手法がマクロ経済分析にも存分に生かされているのだ。
つまり彼は財務省や新聞テレビメディアが作り出すイメージや「世論」に惑わされず、歴史上のモデルケースと「現在起きている現象に関連する」数値データのみを渉猟分析し、「環境に合わせたソリューション」をわかりやすくかみ砕いて説明できるのだ。
従って経済学の教科書にある「常識」や過去の成功体験にもとらわれず、考えも凝り固まらない。
常に分析&対応を続けるため、「この政策をずっと続ければ日本経済は安泰」なんて主張はしない。
このしなやかさ、一種の適応能力があるため既存の「自称」経済評論家達より信頼できる。
しかも氏は実力に加え、政治に大ナタを振るえる率直さも持っている。
本書を日本経済に興味を持ち始めた人に全力でお勧めしたい。