場所は江上氏得意の丹波、「狂宴の果て」と同じだ。母一人子一人でそれはそれは可哀想な子供時代だ。まるで「おしん」を感じさせる。丹波での子供の日々は,「狂宴の果て」のタク、マサ、ケン、ノブだ。今回の違いは貧乏と、他人の家での辛い生活だ。社会人になってからは、短編集「レジスタンス」の「機械の声」、或いは「狂宴の果て」の第二部のようだ。高校卒業までの人生と、名古屋で幸運をつかむ主人公康平は対照的であり、社会人になっての康平は、次第にバブル期の狂乱の世の金融機関の犠牲者となる。名古屋地盤の都銀、「中部日本銀行」、いつもの江上氏流にひどくこき下ろしている。名古屋のこの都銀は、大阪の悪名高い三友銀行と合併し、更に酷いことになる。著者の江上氏は他の作品でも、旧東海と旧三和を徹底的に悪く描くのが痛快だ。ここの部分は「霞ヶ関中央合同庁舎 第四号館 金融庁物語」の大東五輪銀行と同じで、検査忌避事件が起きる。またバブル期の銀行不祥事(富士/赤坂、東海/秋葉原)が多く出てくる。本書は今までで最もハラハラさせ、読者を引きつける筋書きとなっておりとても良いと思った。但し丹波、東海、三和、バブル、不祥事、貸し剥がし、この辺は他の作品とかぶるか。