ANAには、有名な創業者や著名な経営者がいたわけでもない。
企業としての歴史は、政治、行政、経済・・・、さまざまな世の中の流れに翻弄され、
その抗し難い流れの中で経営と社員たちが工夫を凝らして作り上げてきたものである。
本書は、その歴史の中から、働く者(経営者と従業員のすべて)たちの心、
その心の中心にある、著者が言うところの「DNA」が、
何によって形成されていくかを辿った物語である。
もっとも評価すべきは、ホスピタリティ・マインドの淵源や現在の企業理念を支える、
経営者・従業員たちの形になっていなかった歴史の淵源を
ひとつのDNAと呼ぶ「形」として表現していることではないだろうか。
そうした意味で、本書の構成には素晴らしいものがある。
素晴らしいものである故に、最終章の評論部分に期待した多くの人々が、
「ANAにより過ぎている」、「礼賛だ」と不満を述べているのかもしれない。
しかしながら、著者は最初から「ANAのホスピタリティは高い」と認めたうえで、
それを検証しているのであって、そうした議論は意味がない。
たしかに、最終章はもっと多くの情報をリズムある著者の筆致で、
書き込んでもらいたかったところだ。