組織の危機管理をテーマに、なぜ危機を招いてしまうのかということを、様々な事例を引き合いに出しながら組織行動的観点から分析している。最初の方でハッとさせられるのが、よく言われている「団塊の世代が大量引退するから現場力が失われて事故が増える」という論理は間違っているということ。著者によれば、むしろ重大な事故を引き起こすのは己の力を過信し、周囲の助言も聞き入れず、定められた手順を逸脱したベテランであるという。未熟な人間は自分が未熟であることを知っているから緊張し、分からないことがあればマニュアルを確かめたり、先輩に聞いたりするのでかえって事故を引き起こす確率が低くなるらしい。重要なのは、そのような人間を発生させてしまう組織全体における危機意識の不在、行きすぎた効率化、緊急時対応能力の欠如などであるとし、平時においてはなかなか日が当たらず、ともすればすぐにコストカットの対象となってしまう組織における危機管理に警鐘を鳴らしている。大変読みやすく、マネジメント層から現場まで幅広い人たちに読んでもらいたい一冊。